ブラスの思い出⑤

夏休み入ってすぐの吹奏楽コ○クールの本番数日前にトランペットのソロにをもらえた、と嬉しそうに食事時に語った次女。

入部当初は高い音が出なくて、小学校の時からやってる同級生から遅れをとってた次女。

そんな次女がソロに選ばれるなんて!!がんばったね!!と親ばか承知で喜んだ。

本番一日前。

次女のことに関して調子に乗ってた私は、この頃は次女のことで心配することは全くと言っていいほどなかった。

副部長なんだから、みんなとも仲良くやってるだろう。

ソロに選ばれたんだから、上手に演奏してるんだろう。と。

でも、虫の知らせか、ふと「明日のソロ大丈夫?」と次女に尋ねた。

すると、「あんまり・・・」と自信なさげなことを言う。

「今日、最後のランスルー(通し稽古みたいなの)10回中成功したのは3回」

えーーーーー!!?どうするの、もう本番は明日だよ。成功する確立3割って、かなり低くないですか!!?

でも、まがりなりにもオーディションで選ばれたわけだし、他の子が吹いても吹けないような難しい部分なんだよね、と聞くと「・・・オーディション時だけ上手く吹けた」

なにー。まぐれだったって事か!!

先生は?先生は他の子にしようっって言わなかったんでしょ?じゃあ、やっぱり仕方ないんだよ。と続けて聞くと「そんな事(他の子に変更)言うわけないじゃん」(そういえば、そういう先生だった・・・)

お風呂に入った次女の様子をのぞきにいくと、やっぱり元気がない。

「ソロ、失敗したらさぁ・・・みんなさぁ・・・なんて思うかな・・・」とぽつりとつぶやいた。

今回の吹コンはひょっとしたら県大会に進む可能性もあると先生も言ってて、みんなかなり気合が入ってる。そんな大会で次女が失敗して県大会行けなかったら・・・と私も不安だったけど、これ以上次女を追い込むこともできず「その時はその時だよ。でも、これであなた自身は失敗した子の辛さがわかるようになったんだから、これはこれでいい経験になると思うよ」と慰めた(ことになるか?)

大会当日。次女を見送ってから、長女に少し私の不安を聞いてもらった。「○○ちゃん(次女)、ソロあんまり吹けないんだって」と。ふーんとだけ言った長女。
そりゃ、ふーんだよね。

次女が副部長になってから順風満帆で、天狗になってた自分が恥ずかしい。

いまさら謙虚になっても遅いけど、神様、どうかあの子にお力をーーと、身勝手な祈りをするのみ。

大会会場へ向かう途中、何人かのママ友から「○○ちゃん(次女)、今日ソロ、楽しみだね♪」という内容のメールを頂いたが素直に返せず。

会場に着いても、もうどきどきして何がなにやら。

失敗した時のことを考えると他の父兄と座るのも耐えられなかったので(超チキン。子供はがんばってるのに)、一人片隅で観た。

次女のソロは第3楽章とか言ってた。事前にどんな曲かも調べてなかったので(次女は何回かCDをかけてたけど、興味ナッシングだったから覚えてない)一体、どこでどんなソロの演奏があるのかも知らず、ひたすら次女をがん見して一人だけがトランペットを構えるのを待った。

ワルツのゆったりとしたメロディの中、いよいよ次女が楽器を構える。

キターーーー(心の中で大絶叫)

プププープーププー(計6音)

吹けた!!いい音かどうかはさっぱりわからんが、とりあえず外してはいない。

吹き終わった瞬間、ぱーーーーーっと笑った次女。

本番中にそんなに笑っていいのかっていうくらいの微笑み。

はー、よかったー。

演奏終了後、休憩時間中に他の役員仲間と合流したら、開口一番「ソロ成功してよかったね!!」と言ってくれた。

思わず、うるっと来て涙ぐんじゃった。たった6音のソロでお恥ずかしい話だが。

そんな涙ぐむバカ母の私を見て「娘も昨日の夜心配しててねぇ」って。

やはし、あの子が吹けないのをみんなが心配してたのだ。

でも、次女の話だと誰も何も言わなかったって。下手に励ますでもなく、こういう時はやっぱり一緒に練習してきた仲間が一番気持ちをわかってるんだなぁ。それに比べて私の昨夜の取り乱しようといったら・・・。

結果も無事県大会出場を決め、ほっと一安心。

帰ってきた次女に、おめでとうと一緒に、他の部員が昨日家で心配してくれてたことを話したら、「そうなんだってーー。自分は本番の後も泣かなかったのに、みんなが抱きついて『よかったねーよかったねーー』って泣いてくれた!!」と。

ちょっとクールな次女は、友達のために泣くほど心配したことは多分ないから、とっても驚いたし、ありがたかったって。

すっごくいい経験させてもらい、親子そろって成長させてもらいました。